概要
白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形性症候群、骨髄増殖性疾患などの造血器悪性腫瘍、再生不良性貧血などの造血障害、血小板減少性紫斑病や血友病などの止血異常疾患など、あらゆる血液疾患の診療をおこなっています。
当院血液内科は、新潟県中越地域における血液疾患治療の基幹病院として、近隣の病院との連携もとりながら多くの血液疾患治療に関わっています。2015年10月現在血液内科医師は5名で、常時55-60名程度の血液疾患患者さんが入院しています。
特色・方針
血液内科では、入院患者さんに関する全症例検討会(カンファレンス)を開催するとともに、同種造血幹細胞移植症例については別の日に再度カンファレンスをおこない、それぞれ患者さんの治療方針について血液内科医全員で話し合いをおこなっております。それぞれのカンファレンスには医師のみならず看護師・薬剤師も参加して話し合いをおこなっております。
診療の基本方針は、できる限り科学的根拠に基づく医療に沿った診療を提供することを心掛けています。また科学的根拠が乏しい分野や先進的医療に関しては、日本成人白血病研究グループ(JALSG)、日本細胞移植研究会(JSCT研究会)等に加入して、全国レベルの多施設の臨床研究にも参加しています。
難治性の血液疾患(造血器悪性腫瘍や再生不良性貧血など)に対しては、治癒を目指して年間合計約20例程度の自家および同種造血幹細胞移植もおこなっています。同種移植治療の世界では、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植といった造血幹細胞ソースの多様性、また年齢の比較的高い症例に対する骨髄非破壊的前処置による移植(いわゆるミニ移植)などの移植前処置の多様性、HLA一致ドナーのみならず、HLA半合致ドナーからの移植、臍帯血移植等ドナーのHLA一致度の多様性など多くの選択肢が発展してきています。 当院ではこのように発展を続けている多様な移植法に対応して、移植の適応を十分検討して、対象患者さんには最適な移植法を提供できるように努力しています。
- 日本血液学会:血液研修施設
- 日本骨髄バンク: 非血縁者間骨髄採取認定施設・認定移植診療科
- 日本さい帯血バンク:登録移植医療機関
対象疾患について
造血器悪性腫瘍
急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病やその他の骨髄増殖性腫瘍、慢性リンパ性白血病など
造血障害
再生不良性貧血、溶血性貧血、赤芽球癆、巨赤芽球性貧血、発作性夜間血色素尿症など
血栓・止血疾患
特発性血小板減少症性紫斑病、血友病をはじめとして出血傾向を有する疾患など
実績
新潟県内中越地域の基幹病院として、多くの血液疾患患者さんを受け入れております。
2014年1年間の入院血液疾患症例数は、新規血液疾患症例数91例を含む346例でした。内訳は、白血病+骨髄異形性症候群86例、悪性リンパ腫+多発性骨髄腫205例、その他特発性血小板減少性紫斑病、再生不良性貧血など55例に分類されます。
また当院血液内科では2002年から造血幹細胞移植治療も開始しています。2014年までに156件の移植をおこなってきました。移植件数も増加傾向で、2014年1年間の造血幹細胞移植の実績症例数は、総移植件数 27 件でした。移植ソース別の件数は以下の通りです。
移植ソース別 内訳
2002年〜2013年 | 2014年 | |
---|---|---|
自家末梢血 | 24件 | 10 件 |
血縁末梢血 | 13件 | 4件 |
血縁骨髄移植 | 22件 | 3件 |
非血縁骨髄移植 | 35件 | 3件 |
非血縁臍帯血移植 | 35件 | 6件 |
血縁骨髄+末梢血移植 | 1件 | |
合計 | 129件 | 27件 |
医師紹介
氏名 | 職位 | 専門領域 | 認定資格等 |
---|---|---|---|
古川 達雄 (昭和58年卒) |
部長 | 血液内科学 | 日本血液学会専門医・指導医・評議員 日本造血細胞移植学会認定医・評議員 日本内科学会認定内科医 日本がん治療認定医機構暫定教育医 |
橋本 誠雄 (昭和62年卒) |
部長 | 血液内科学 | 日本血液学会専門医・指導医 日本内科学会認定内科医 |
黒羽 高志 (平成4年卒) |
部長 | 血液内科学 | 日本血液学会専門医・指導医 日本内科学会認定内科医 |
矢野 敏雄 (平成9年卒) |
部長 | 血液内科学 輸血学 |
日本血液学会専門医 日本内科学会認定内科医 日本輸血細胞治療学会認定医 |
佐藤 直子 (平成10年卒) |
血液内科学 | 日本血液学会専門医・指導医 日本内科学会認定内科医 |
|
小池 正 (昭和50年卒) |
患者さんへ ~臨床データの研究利用に関するお願い~
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬 ナルデメジン(商品名 スインプロイク)の患者・医師双方の内服・投薬コンプライアンスの評価、および至適使用法を明らかにするための臨床データの研究利用に関するお願い
研究の概要・背景
多くのオピオイド鎮痛薬(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなど)の鎮痛作用は、主に中枢のμオピオイド受容体を介して発現します。同時に消化管に存在する末梢性μオピオイド受容体にも作用し便秘症を引き起こすと言われています。
がん疼痛に対してオピオイド鎮痛薬による緩和ケアを受けている患者さんの便秘症の頻度は32~87%とも報告されており、長期的に患者さんの生活の質を落としてしまう場合が少なくありません。これまで『オピオイド鎮痛薬の使用によって起こる便秘症』に特化した薬剤はありませんでした。
スインプロイクは血液脳関門を透過しないように構造開発され、中枢におけるオピオイド鎮痛薬の作用(鎮痛作用)は阻害しにくいように作られた『オピオイド鎮痛薬の使用によって起こる便秘症』に対する末梢性μオピオイド受容体拮抗薬です。
試料・情報の利用目的・方法
平成29年6月にスインプロイクが発売となり、8月より当院でも使用できるようになりました。『オピオイド鎮痛薬の使用によって起こる便秘症』で悩む患者さんにとって有益な薬になる可能性があります。 その内服・投薬コンプライアンスの評価と、これまでオピオイド鎮痛薬使用時に併用されてきた便秘薬である浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど)・刺激性下剤(センノシド、ピコスルファートナトリウムなど)との至適使用法を明らかにするために、前方視的に臨床データを収集分析したいと考えています(期間は平成29年10月~平成31年9月までを予定しています)。
データ利用のお願いと申し出について
これらの臨床データは通常の診療で過去に記録されたもので、患者さんに新たな負担はありません。また、個人を特定できるような状態でデータを使用することはありません。本研究の目的と、臨床データ利用に関するご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。 なお、本研究に関するさらなる説明をご希望の方、また、本研究において臨床データの利用を希望されない方は下記問い合わせ窓口にご連絡ください。研究不参加を申し出られたとしても、患者さんが不利益を受けることは一切ありません。
【お問い合わせ先】
長岡赤十字病院 血液内科
担当医師:佐藤 直子
〒940-2085 新潟県長岡市千秋2-297-1
電話:0258-28-3600(代) FAX:0258-28-9000(代)