概要
病理診断部では病院に来られた患者さんより採取された検体から顕微鏡で観察できる標本をつくり、病理診断を行っています。病理診断は患者さんの適切な治療のために大きな役割を果たしています。
ご挨拶
わたしたち病理診断部は2名の病理医、6名の臨床検査技師と1名の事務職員で業務を行っております。日々研鑽を積みながら、各科主治医が患者さんに適切な医療を提供できるよう努めています。
病理診断部 薄田浩幸
特色・方針
病理診断部に所属している病理医は病理専門医と細胞診専門医の資格を有しています。臨床検査技師はすべて細胞検査士の資格を有しています。また、複数名が遺伝子分析科学認定士の資格を有し、一級遺伝子分析科学認定士もおります。病理診断補助として免疫組織化学染色を組織診断だけでなく、細胞診断にも積極的に応用しています。腫瘍の診断では、PCR法を用いた遺伝子解析を行い、より正確、詳細な情報を主治医に報告できるよう努めています。また、必要に応じて電子顕微鏡検査(電顕)も行います。
主な業務
1. 細胞診断
患者さんから採取された検体から細胞検査士が細胞診標本を作製しスクリーニングにより異常細胞を拾い上げ、細胞診専門医が診断を行います。
2. 生検組織診断
各科医師が診断・治療のため患者さんより病変の一部を採取し、病理診断部臨床検査技師が病理組織標本を作製し、病理専門医が病理診断を行います。
3. 手術で摘出された臓器・組織の診断
手術により摘出された検体を、生検同様、病理診断を行い今後の治療方針決定に必要な情報を主治医に提供します。
4. 手術中の迅速診断
手術中に採取された検体を、臨床検査技師が直ちに病理標本を作製し、病理医が迅速病理診断を行い、手術を行っている医師に報告します。1~3に比べて作製された標本から得られる情報は限定されますが、手術の術式の決定・変更などに必要な重要な情報を含んでいます。
5. 病理解剖
不幸にして亡くなられた患者さんに対し、ご遺族の承諾のもと病理解剖を行っています。これは生前の病気の進行状態や治療効果、直接死因などを可能な限り明らかにする事を目的としています。患者さんやご遺族と直接接する機会はあまりありませんが、解剖結果は主治医に報告され日々の診療に生かされております。
実績
平成28年度 病理診断 外来・入院別件数
(H28.4~H29.3)
外来 | 入院 | 院外 | 合計 | 前年度項目別 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
合計 | 増減(%) | |||||
組織材料 | 5,535 | 4,177 | 3 | 9,715 | 9,728 | -0.1 |
迅速 | 4 | 343 | 12 | 359 | 391 | -8.2 |
免疫組織 | 1,157 | 1,383 | 27 | 2,567 | 2,418 | 6.2 |
ER/PGR | 252 | 50 | 8 | 310 | 304 | 2.0 |
HER2/EGFR蛋白 | 151 | 35 | 4 | 190 | 203 | -6.4 |
HER2FISH | 66 | 3 | 0 | 69 | 77 | -10.4 |
ALK/PD-L1蛋白 | 35 | 22 | 0 | 57 | 1 | 5,600.0 |
PCR | 621 | 445 | 1 | 1,067 | 1,340 | -20.4 |
他院標本 | 58 | 1 | 2 | 61 | 43 | 41.9 |
診断料 | 5,241 | 2,993 | 507 | 8,741 | 8,938 | -2.2 |
細胞診 | 10,591 | 2,072 | 2 | 12,665 | 13,196 | -4.0 |
合計 | 23,711 | 11,524 | 566 | 35,801 | ||
前年度計 | 23,759 | 12,238 | 658 | 36,655 | ||
増減(%) | -0.2 | -5.8 | -14.0 | -2.3 |
解剖の診療科別状況
28年度 | 27年度 | 26年度 | 25年度 | 24年度 | |
---|---|---|---|---|---|
内科 | 9 | 11 | 13 | 9 | 11 |
神経内科 | 1 | 0 | 3 | 1 | 0 |
小児科 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 |
胸外 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
泌尿 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
外 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
整外 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
婦 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
脳外 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
救急外/院外 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 10 | 13 | 17 | 11 | 12 |
剖検率 | 1.52% | 1.98% | 2.49% | 1.69% | 1.71% |
※剖検率は外来死亡者を除いた死亡者数に対する比率
医師紹介
氏名 | 職位 | 専門領域 | 認定資格等 |
---|---|---|---|
薄田 浩幸 (平成2年卒) |
部長 | 人体病理 | 日本病理学会認定病理専門医 日本病理学会認定病理専門医研修指導医 日本臨床細胞学会細胞診専門医/教育研修指導医 日本臨床検査医学会臨床検査管理医 |
江村 巌 (昭和49年卒) |
人体病理 | 日本病理学会認定病理専門医 日本病理学会認定病理専門医研修指導医 日本臨床細胞学会細胞診専門医/教育研修指導医 |
お知らせ
病理について、より詳しい事を知りたい場合は、「一般社団法人 日本病理学会」のホームページをご覧下さい。 http://pathology.or.jp/ippan/pathdiag.html
患者さんへ ~臨床データの研究利用に関するお願い~
◆間質性肺炎症例から生検された肺組織および間質性肺炎の急性増悪のため死亡された剖検例を用いた間質性肺炎急性増悪機序の病理組織学的検討の臨床データの研究利用に関するお願い
◆COPD(慢性閉塞性疾患)症例の増悪機序の解明と予後因子の特定の臨床データの利用に関するお願い
間質性肺炎症例から生検された肺組織および間質性肺炎の急性増悪のため死亡された剖検例を用いた間質性肺炎急性増悪機序の病理組織学的検討の臨床データの研究利用に関するお願い
研究の概要・背景
間質性肺炎患者さんの多くでは経過中に突然症状が悪化することがあり、これを間質性肺炎の急性増悪と言います。間質性肺炎急性増悪を起こした患者さんの予後は極めて不良であり、間質性肺炎急性増悪の仕組みはよくわかっていません。
研究代表者の江村巖は診断のために生検された間質性肺炎患者の肺内に炎症性肺障害病変があること、この病変が間質性肺炎の急性増悪に深く関わっていることに気づきました。
研究の目的・方法
間質性肺炎の診断のために肺生検され、および間質性肺炎の急性増悪のために死亡され、当院の病理診断部にパラフィンブロックの状態で保管されている資料を用い、間質性肺炎急性増悪機序を病理組織学的に検討します。そして、上記資料を主に免疫組織学的に検討いたします。
研究の期間
平成29年2月1日から 平成29年9月30日まで(暫定)。
データ利用のお願いと申し出について
本研究は、当院の病理診断部に蓄積されている材料を用いてなされます。観察される病理所見や検討される肺機能検査結果から患者さん個人を特定することはできません。個人情報保護法、および「人を対象とする医学系研究の倫理指針」に則り、個人情報は固く守られます。
【お問い合わせ先】
長岡赤十字病院 病理診断部
担当医師:江村 巌
〒940-2085 新潟県長岡市千秋2-297-1
電話:0258-28-3600(代) FAX:0258-28-9000(代)
COPD(慢性閉塞性疾患)症例の増悪機序の解明と予後因子の特定の臨床データの利用に関するお願い
研究の背景
COPDの患者数は多く、2020年には死因の第3位になると考えられています。COPD患者さんは増悪を繰り返し、肺機能が低下し、死亡します。喫煙はCOPDのリスク因子であり、好中球による肺障害がCOPDの本態と考えられていますが、好中球が肺に動員される仕組み、好中球による肺障害の仕組み、増悪の仕組み、増悪を認識するマ-カ-は解明されていません。
私たちは病理解剖例の検討からCOPD患者さんの肺内に低酸素状体により形成される微小な肺障害病巣が存在すること、それら病巣が形成された患者の末梢血中にはマクロファ-ジに分化した細胞が出現していることを発見しました。
研究の目的
- 肺癌のために切除され、COPDを合併した肺組織を検討し、微小な肺障害病巣の形成の仕組みを解明する。
- COPD増悪のため死亡された剖検例を検討し、増悪の仕組みを病理学的に解明する。併せて、増悪と末梢血中のマクロファ-ジの関係を解明する。
- 末梢血中へのマクロファ-ジの出現が増悪のリスク因子であることを解明する。
期間
平成28年4月1日から 平成29年9月15日(暫定)まで。
研究の方法・対象者
研究目的3に関しては本院を受診されたCOPD患者さんから一般検査のため採血された末梢血の残りを用いて末梢血中にマクロファ-ジが存在するか否かを検索し、マクロファ-ジの出現と増悪との関係を解明します。そのため、患者さんへの負担はありません。
本研究において末梢血中のマクロファ-ジの有無以外にはCOPD患者さんの個人情報は使用されず、マクロファ-ジの有無からはCOPD患者さんを特定できないため、COPD患者さんの個人情報は個人情報保護法、および「人を対象とする医学系研究の倫理指針」に則り、固く守られます。
また、上記【研究の目的1. 3.】についてはデータを統計処理し、全体としてのデータのみを利用しますので、個々のデータが特定されることはありません。【研究の目的2.】については、個人を特定できないよう関連する項目は削除することにより、匿名化を行います。
なお、倫理指針に沿って、既存の試料を用いることとし、新たに人体から取得した試料を用いることはありません。
【お問い合わせ先】
長岡赤十字病院 病理診断部
担当医師:江村 巌
〒940-2085 新潟県長岡市千秋2-297-1
電話:0258-28-3600(代) FAX:0258-28-9000(代)